「フェアトレードっていうのは、商品というより運動なんですよ」
輝久さんは言う。
「例えば、珈琲を作っている発展途上国の農園に行くと、ピッキングの技術がかなり甘い。実際に自分たちの作った物がどう飲まれているのか、どうすれば美味しくなるのかが分からないから、”せっかく作った物を捨てるなんて…”と、もったいなさの方が勝ってしまうんです」
そこで、フェアトレードに携わっている人たちは、どうすれば商品が高く売れるのか、その技術を伝えるのだそう。
「売るための技術を伝える技術を伝えるのに、理解能力がなければ学校を作って教育をする。働く人たちは自分たちの作物に自信を持つようになる。子どもがそれを見て育つ。そんな流れを作りたいんです」
輝久さんが見据えているのは、きっと何十年も先の未来だ。

「私の理想は、”フェアトレード”という言葉が世界中からなくなることです。つまり、当たり前にフェアトレードが行われるようになること」
と、和子さん。
「それに、フェアトレードで作られているものって、草木染めなどの手仕事のものやオーガニックなものなど、私たちが豊かな生活のために手放してしまった物がたくさんあります。着心地もいいし、使い勝手がいいものもたくさんある」
お二人が伝えたい、”商品が運ぶ物語”とは。
「現地の人たちは電気のない山奥で生活していたり、必ずしも便利な場所ではありません。しかも、珈琲などの商品作物を作っていると、余った物を自分たちの食料として食べることもできません。作物を売った少ないお金で貧しい生活をされているんです。
そんなお話を、たくさんの方にお届けしたいです。」
「それから、フェアトレードの商品は、日本国内での流通量が他国に比べて圧倒的に少ない。私たちがウィーンに行ったときに驚いたのが、ごく普通のスーパーに並ぶフェアトレード商品の多さ。おそらく、買い物客は知らずに購入することも多いでしょう。」
確かに、日本ではごく一部のフェアトレードのお店や百貨店の催事などで、”意識のある人たちが”購入するイメージを、私もかつて持っていた。
長い時間お話を伺ったが、まだまだ知らないことはたくさんありそうだ。
最後に、エシカルなくらし、について尋ねてみた。
「フェアトレードはまさに”エシカル”だと思います。その視点から見ると、今の資本主義は”今だけ金だけ自分だけ”という側面が大きい。お金を持つ人たちのところにお金が集まり、お金のない人たちは買う物を選択するのが難しい、そんな社会に見えてしまいます。エシカルなくらしというのは、きっとそういう生き方の反対側にあるのだと思います。」
未来のことを考え、人のことを考え、お金で買えない物を大切にすること。
全ての人が”当たり前”にそんな考えを持ち、実行する未来。
そんな未来の物語が、実現すればいいと思う。
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当日は、斎藤さんご夫妻にフェアトレードに対する疑問、質問をどんどんぶつけてみましょう!
Interviewer:能勢妙見山観光協会 植田観肇 吉井麻里子(記)





