「エシカルって、押しつけではなく、受動的なものでもなく、自然発生的にできあがるものだと思うんです。」
加美さんのお父様はよく”エシカル”という言葉を使っていたそうだ。
そんな加美さんが話してくださった、エシカルに対する思いは、私の感じているものととてもよく似ていた。
「たとえば、おいしいいちごジャムを食べたとする。どこでできたんだろう、と見てみると産地が書いてある。栃木県か、ちょっと行ってみよう、となる。
農薬を使っていないとか、太陽の下で育ったいちごはとても美味しいとか、そこで見た色々なものが、自分の中で”エシカル”なものとして書き換わっていく。そんな自然発生的なものが良いと思うんですよね。それが正しいか正しくないかは、その後で、先人たちからの智慧として残っているものを参考に考えればいい。」
加美さんはおなじみの温かみのある声で、さらに続ける。
「エシカルってそんな風に、自分の考えと組み合わさってできていくものなので、それぞれ違って当たり前。電車で席を譲った方がいいと思う人と、譲ってほしくない人がいたとき、それはどちらのエシカルも正しいんですよね。
だから、イベントで”エシカルのためにこうしよう!”と決定づけてしまったり、それを来た人に押しつけてはいけないと思う。」
それぞれの「エシカル」。認め合うためにはどうすればいいのか。
「僕はつまり、エシカルってコミュニケーションのことなんではないかと思うんです。エシカルについて、自分の価値観について、もっと発信して、受け入れ合う。山のお寺なんか、そんな語り合いをするのにもってこいですよね。」
ふむふむ、そんな語り合い、とっても面白そうじゃないか。なんてつい考えてしまう。
「エシカルには定義がない。誰に対しても平等にエシカルはある。
そういえば、以前海外の駅の中で驚いたことがありました。少年がおもむろに笛を吹き始めたんです。そしたらおじいちゃんが寄っていって、注意するのかな、と思ったら手拍子を始めた。数分後にはものすごい盛り上がってました 笑
常識とかそういうものを越えて、表現したり受け入れたりって、日本ではあまりないけど、面白いですよね」
「そうそう、僕は実は、真穂ちゃんってすごく”エシカル”な存在だと思う」
加美さんがふと、真穂さんの方を向いて言った。
(②に続く)
加美幸伸(Yukinobu Kami) Profile
1964年9月26日生。ラジオDJ歴27年。現在はFMCOCOLOで『The Magnificent Friday』『VIntage Hits Parade』『Saturday Magnificent Camp』の3番組を担当。
ミュージシャンへの熱いインタビューには定評がある。
幕間寸劇ボサノバ一座「ScatRaw」の座長として、また自身も「加美ラジオ」として朗読、芝居、トークショウなど自主企画をプロデュース。
またプロレスなどを中心にスポーツ分野での活動も多数。
